青い空は闇に光る

datememo
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2010.04.22 「ねえ、ジュディス。もしね、もしの話しなんだけれど・・・」
その先に紡がれた言葉の意味をもっと早く理解し、このような結末になる前に防いでいることができたのならば、ユーリもそして彼女自信も傷つくことはなかったのだろうか。
ジュディスは目の前の現実に珍しく直視することができなくて、思わず眸を伏せ唇を僅かながら奮わせた。
どうしてこのような日に限って皮肉なほど気持ちの良い快晴が広がっているのか、ジュディスの横でレイヴンもそんな空を恨めしげな目で睨みつけている。
誰が悪かったのか、そんな問いは愚の表れで、決してこの現実を安っぽい一言で簡潔するにはあまりに残酷かつ無情であることに、リタは息をするのも忘れるほど胸を痛めた。
男らしく勇ましい存在でありたい、そう思っていたカロルであっても強がって涙を抑えることもできずただ静かにその頬を濡らし、黒髪の男の足元に広がる血溜りに愕然とした表情を浮かべることしかできない。
壊れたマリオネットを修復できるのか、そんな問いを彼女から以前受けたことのあるエステルはなぜあの時彼女がそんな「あたりまえ」の問いかけをしてきたのかその真意を知ることはできなかったが、現在ならば苦しいくらいよくわかる。
助けられるはずの人を助けられなかったことは万死に値しないのか、ユーリはすでに息の根が止まりかけている彼女の存在をあの世にはいかせないといわんばかりに強く腕の中に掻き抱いた。
押し寄せてくる後悔の波が、心の岸辺に押し寄せるほどユーリの感情の欠片を一つ一つさらっていき、いつの間にか自分が空っぽになっていることに気がつく。
それでも拾い集めようとしないのは、すでに彼女の罪を知り得てしまったからというのも理由であるが、何よりその罪を仲間としてまた恋人として傍にいたのにもかかわらずその痛みを共有してやれなかったという無念さから。
知らなかったでは済まされない現実は、今になってデュークという過去の忘れられし戦争の英雄から伝えられ、ユーリに驚愕と愕然を与えた。
それはまさに予期しなかった真実。そして彼に戒めの鎖としてとりついて、脳裏から、身体から消えることはない。
むしろその真実は今までユーリがふと彼女の影から感じていた疑問を、率直にかつ残酷に示しただけであって、言い方を変えればユーリが望んだ真実でもある。
だが時に真実が人に与えるものが決して善きものであるとは限らないことをまざまざと知らしめられた。
知って尚無力な自分自身に、地団駄をふみたくなったユーリだったが、ふと生気を失ったかすれた声で呼ばれたことでそんな苛立ちも一瞬にして消し飛ぶ。
「ユー・・リ・・・?」
口の端から血の筋をたらし、虚ろな眼差しを向けることしかできぬ彼女にユーリは顔面蒼白で、目に見えた動揺を示す姿はなかなか日常で見られたものではない。
しかしジュディスは確かにその目に焼きつけていた。なぜだかわからない、だが彼女はそんなユーリに対して口端から血を尚も流しながらそれでも緩め笑っていた。
安心して、と根拠のない笑顔を向けているものの、彼女の様態は寄り一層悪くなっていくのは誰が見ても一目瞭然のこと。
それでも決して諦めず足掻くのは、おそらくユーリが今後罪に苛まれ道を違えないように配慮したためなのだろう。
「ね・・・ユーリ。」
「やめろ、話すな。」
「ユー・・リ。わたし、ね。しあわせ・・・だよ?」
誰もが息を呑んだのが、張詰めた空気の中ジュディスにはわかった。
衝撃的かつ優美な一言は、今までの彼女自身の試練に塗れた人生を否定するものではなく、むしろそれさえも楽しんでいたかのような子供のような声色だった。
自分の生い立ちすら知らなかった二十年間の成れの果ての真実は、エステルが満月の子であったという事実よりも残酷かつ無情であったのにも関わらず、だ。
エステルの治癒術も効かぬ体で、懸命にユーリに頬に手を伸ばし笑う彼女の姿は、少なくともジュディスの瞳には恋する女として美しく輝いていた。
「ユーリ。」
「やめろ。」
「笑って。」
「黙れよ。血が・・・」
「ね、わら・・っ・て?」
途切れ途切れに繋ぐ言葉はあまりにたどたどしく頼りなさげでか細かったが、ユーリの耳にははっきりと届きリクエストに答えようと苦し紛れな笑みをつくる。
その痛ましいまでもの思いやり溢れる二人のやり取りは、他の仲間たちの心にどのように響いたのか。
ジュディスは震える唇をそっと噛み締め、手のひらを力強く握ると込み上げてくる胸の熱さを一瞬だったが忘れることができた。
ジュディスにはそれだけの時間があれば十分だった。
「あの時の話しは、こういうことだったのね。」
「ジュディス?」
「忘れろだなんて言っていたけれど、まさかあなたこうなることをわかっていたから・・・」
「ごめ・・ん・・・ね?」 
険しい表情を浮かべるジュディスの口調は切迫感があり、そんな二人の間でしかわからぬ会話を繰り広げられる中仲間たちは二人の会話にただ聞き入ることしかできない。
「あの時は答えを言う前にあなたに話をそらされてしまったけれど、今ならはっきりと答えられる。」
「おい、二人とも何を・・・」
カロルとエステリーゼは困惑した面持ちで、ジュディスを見つめる。
リタは何事か叫び二人の会話に横槍を入れようとしていたが、その横からレイヴンが止めに入りその口を両手で塞ぐ。
そしてユーリは二人のやり取りから少ない情報ながらも何か引き出そうと、出方をうかがっている。
そんな十の瞳がジュディスに集まり緊迫感増す空気中を過ぎっても、ジュディスはもう迷わなかった。
「あなたは間違っているわ。尤も・・・止められなかった私自身のほうが重罪に値してしまうのかしらね。」
悲しげに呟いたジュディスの一言が、如実に心境を物語り彼女は薄らぐ意識のなかふと気づく。
誰よりも苦しんでいるのは、自分でもなくユーリでもなく・・・ジュディスなのではないか、と。
その原因を死す前につくった自分は決して天国になどいけはしないのだと、確信をした。


「ねえ、ジュディス。もしね、もしの話しなんだけれど・・・私が人間でない存在だって言ったら驚く?」




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18:35 | 日々

2010.04.18 隣に立ち続けていることができなくても、心のどこかは繋がっているものだと妙な考えに取りつかれていたことが、いかに愚かで惨めなのか容易くしらしめられた。
彼、が私のことを愛しているだなんてそんな曖昧で具現化できない極めて抽象的な存在の確証などありはしないというのに、だ。
権利や事実上の立場の立証を欲していたわけではない。
頭の中では分別できたのだが、しかし今となってはそんな理性もただの塵としかならず私の理性を止める術にならない。
「当麻。」
単純でかつ明確で、それでもって醜悪で劣悪な自分を曝け出すことに躊躇いを覚えなかったわけではないが、それでも一瞬でもかまわない。
彼にどのように思われ、受け取られ、拒絶されようがその瞳が私を捉えてくれたという事実がそこにあれば。
「当麻。」
もう一度、今にも消えかけそうな蝋燭の灯火のような口調に何を思ったのか彼は、一歩確実に一歩と私の傍に寄ってくる足音が雑音のごとく耳をつんざく。
アスファルトを踏みしめる靴の踵の音が、やけに耳に残り私の心臓を爆発的に鼓動させた。
永遠の別れとこの世の不可思議なめぐり合わせを助長させる運命、とやらを胸に秘めるなど厚かましく彼にとって迷惑であることはわかっている。
それでも紙一重の世界をすり抜けるこの感覚は、酷く心を締め付けられる。
たかが友人。たかが知り合い。たかがクラスメイト。たかが顔見知り。たかが一、能力理解者。
繋がりなど深いようで浅く、太いようで細い。そんな自己理解もしかとできていない関係で結びつく私と上条当麻の関係は酷く不安定でむず痒い。
インデックスよりは遠く、御坂美琴よりは近く。ただそれは一般的な目線、いわゆる客観的視点において冷静に分析したところでの話し。
悔しい、そう問われれば頷くしかないのであろうが、あの優しき白乙女のシスターを恨める人間などこの世のどこにいようか。
上条当麻が記憶を失い、私のことを覚えていないそう呟いた夏の日。
彼はほんの一瞬私との関係に目を見開いたが、すぐに私が傷つかないよう配慮をしてくれて、その時の当麻にとって私は・・・他人でしかないのにも関わらず、私の好きな笑顔で傍にいてくれた。
当麻は私にとって、太陽のような存在だった。
周囲の人間が彼を不幸だと話しのネタにするなかでも、わたしには彼が不幸の渦中に佇む「カワイソウ」な人類には到底思えなかった。
父親がいる。母親がいる。インデックスがいる。土御門がいる。青髪ピアスだっている。御坂美琴だって・・・
必ず当麻の傍には人の影がついては周り、気づけば彼を中心に皆がまき込まれいつの間にか笑いの台風が上陸している。
一種の才能ではないか、そう思う。
だから当麻は、私のような不出来な女の傍に居続けてはいけないのだ。そういつの間にか心の片隅で漠然と理論づけ始めていた。
そう考えれば、当麻は生きるうえでの環境には恵まれている。少なくとも私以上には。
「ごめんね、当麻。」
「お前・・・何言ってんだよ。」
自分の生い立ちやら現状に対して、今までもこれからも悲観的になるつもりはないし悲観的に嘆いたところで変化の片鱗すら見られないことはわかっている。
それでもこの瞬間だけは、涙を零す権利くらい与えられて当然ではないか、そう願いたい。
血みどろの中に佇む私の右腕は、当麻の右腕とは異なり真っ赤な血色に染まり罪悪の塊として地面にポタリポタリと血滴が血溜りを形成していく。
見られた、という驚きよりも何より私は酷く安堵し同時に押し寄せてくる、涙の嵐に視界はすでに歪み始めてしまっている。
「何やってるんだよ!」
顔色を真っ青に眉間に皺を寄せた当麻が、私と足元に転がる肉塊の傍に寄ろうと歩みを進ませてくるがそれよりも早く無意識に動いたのが私の足。
一息に当麻の懐へ潜り込むと、少しの手加減を加えたこぶしを急所に叩き込む。
心の大半を占めたのは今や感じることなど許されない、悲しみと恐怖感。
蓄積してきたさまざまな感情が当麻に頭ごなしに拒否されそうで、思わず口を開く気力すらしかし息の根を絶つほどの力強さではない程度に当麻の体に叩き込んだこぶしを見つめる。
地面に伏し、立ち上がることのできない当麻は苦しそうに何度か咳き込むとゆっくりと虚ろな眼差しを私に向けてくる。
「何で・・・」
「当麻は知らなくていいの。以前の記憶を失くす前の当麻だって知らなかったことよ。だから忘れて?」
「何言って・・・」
「忘れてよ、当麻。お願い。」
じゃないと私、と言葉を区切った私を厳しい表情で見つめる当麻は相も変わらず地に倒れたまま、もう一度咳き込み細い息づかいを耳に聴こえるたび、震える体を隠せなくなりそうで怖い。
演技をし続けなければならない。
全ては当麻のため。決して私を護るためではなく、当麻の命を護りとおすため。
「ありがとうね、当麻。」
「やめろ。」
「大好きだよ、当麻。いつでも私にとっては当麻は一番だった。だからありがとう。」




もう会うことはできないけど、決して忘れないから



11:00 | 日々

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