青い空は闇に光る

datememo
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2010.04.18 隣に立ち続けていることができなくても、心のどこかは繋がっているものだと妙な考えに取りつかれていたことが、いかに愚かで惨めなのか容易くしらしめられた。
彼、が私のことを愛しているだなんてそんな曖昧で具現化できない極めて抽象的な存在の確証などありはしないというのに、だ。
権利や事実上の立場の立証を欲していたわけではない。
頭の中では分別できたのだが、しかし今となってはそんな理性もただの塵としかならず私の理性を止める術にならない。
「当麻。」
単純でかつ明確で、それでもって醜悪で劣悪な自分を曝け出すことに躊躇いを覚えなかったわけではないが、それでも一瞬でもかまわない。
彼にどのように思われ、受け取られ、拒絶されようがその瞳が私を捉えてくれたという事実がそこにあれば。
「当麻。」
もう一度、今にも消えかけそうな蝋燭の灯火のような口調に何を思ったのか彼は、一歩確実に一歩と私の傍に寄ってくる足音が雑音のごとく耳をつんざく。
アスファルトを踏みしめる靴の踵の音が、やけに耳に残り私の心臓を爆発的に鼓動させた。
永遠の別れとこの世の不可思議なめぐり合わせを助長させる運命、とやらを胸に秘めるなど厚かましく彼にとって迷惑であることはわかっている。
それでも紙一重の世界をすり抜けるこの感覚は、酷く心を締め付けられる。
たかが友人。たかが知り合い。たかがクラスメイト。たかが顔見知り。たかが一、能力理解者。
繋がりなど深いようで浅く、太いようで細い。そんな自己理解もしかとできていない関係で結びつく私と上条当麻の関係は酷く不安定でむず痒い。
インデックスよりは遠く、御坂美琴よりは近く。ただそれは一般的な目線、いわゆる客観的視点において冷静に分析したところでの話し。
悔しい、そう問われれば頷くしかないのであろうが、あの優しき白乙女のシスターを恨める人間などこの世のどこにいようか。
上条当麻が記憶を失い、私のことを覚えていないそう呟いた夏の日。
彼はほんの一瞬私との関係に目を見開いたが、すぐに私が傷つかないよう配慮をしてくれて、その時の当麻にとって私は・・・他人でしかないのにも関わらず、私の好きな笑顔で傍にいてくれた。
当麻は私にとって、太陽のような存在だった。
周囲の人間が彼を不幸だと話しのネタにするなかでも、わたしには彼が不幸の渦中に佇む「カワイソウ」な人類には到底思えなかった。
父親がいる。母親がいる。インデックスがいる。土御門がいる。青髪ピアスだっている。御坂美琴だって・・・
必ず当麻の傍には人の影がついては周り、気づけば彼を中心に皆がまき込まれいつの間にか笑いの台風が上陸している。
一種の才能ではないか、そう思う。
だから当麻は、私のような不出来な女の傍に居続けてはいけないのだ。そういつの間にか心の片隅で漠然と理論づけ始めていた。
そう考えれば、当麻は生きるうえでの環境には恵まれている。少なくとも私以上には。
「ごめんね、当麻。」
「お前・・・何言ってんだよ。」
自分の生い立ちやら現状に対して、今までもこれからも悲観的になるつもりはないし悲観的に嘆いたところで変化の片鱗すら見られないことはわかっている。
それでもこの瞬間だけは、涙を零す権利くらい与えられて当然ではないか、そう願いたい。
血みどろの中に佇む私の右腕は、当麻の右腕とは異なり真っ赤な血色に染まり罪悪の塊として地面にポタリポタリと血滴が血溜りを形成していく。
見られた、という驚きよりも何より私は酷く安堵し同時に押し寄せてくる、涙の嵐に視界はすでに歪み始めてしまっている。
「何やってるんだよ!」
顔色を真っ青に眉間に皺を寄せた当麻が、私と足元に転がる肉塊の傍に寄ろうと歩みを進ませてくるがそれよりも早く無意識に動いたのが私の足。
一息に当麻の懐へ潜り込むと、少しの手加減を加えたこぶしを急所に叩き込む。
心の大半を占めたのは今や感じることなど許されない、悲しみと恐怖感。
蓄積してきたさまざまな感情が当麻に頭ごなしに拒否されそうで、思わず口を開く気力すらしかし息の根を絶つほどの力強さではない程度に当麻の体に叩き込んだこぶしを見つめる。
地面に伏し、立ち上がることのできない当麻は苦しそうに何度か咳き込むとゆっくりと虚ろな眼差しを私に向けてくる。
「何で・・・」
「当麻は知らなくていいの。以前の記憶を失くす前の当麻だって知らなかったことよ。だから忘れて?」
「何言って・・・」
「忘れてよ、当麻。お願い。」
じゃないと私、と言葉を区切った私を厳しい表情で見つめる当麻は相も変わらず地に倒れたまま、もう一度咳き込み細い息づかいを耳に聴こえるたび、震える体を隠せなくなりそうで怖い。
演技をし続けなければならない。
全ては当麻のため。決して私を護るためではなく、当麻の命を護りとおすため。
「ありがとうね、当麻。」
「やめろ。」
「大好きだよ、当麻。いつでも私にとっては当麻は一番だった。だからありがとう。」




もう会うことはできないけど、決して忘れないから



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