青い空は闇に光る

datememo
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2010.03.28
「今すぐこの場を立ち去って、二度と戻らないでください。」

夢であってほしい、そんな現実逃避を抱きはじめた心とは別に脳内は酷く冷静に弁慶の分析し始めている存在があった。
腐れ縁のようなものであった彼との関係は、つかず離れずといったもどかしさをはらんだ距離を保った関係で、それが昔馴染みであるのかそれともただの知人であるのか彼の真意はわからない。
ただ、現在進行形で知りえた知識から導きだせた答えはあまりに単純で明快なものであった。
すべてが狂いだしたのは、そうだ春日望美と有川譲が源氏軍とともにこの京へ現れたときからだと脳裏はよく記憶している。
九郎は酷く不機嫌で景時はどこか困り顔、妹の朔は二人を歓迎するといった様子を見せ、弁慶はというと丁寧な態度で望美を扱いわざわざ私に紹介してくれた。
弁慶が何をもって私に彼女を紹介したのか、その真意は言わずも長い付き合いの勘とやらで推測でき、弁慶は私に望美が確かに白龍の神子であり協力する価値があるのか観察しろ、あの日の彼の瞳はそう語っていた。
仕事を選ぶ権利は私にもあるが、彼はよく私の心理を理解しており、思いを寄せている私が断ることをしないと高をくくってそう指図した。
軽い気持ちといっては後々報酬を得る私が言うには相応しくない言い方かもしれないが、それでも私ははじめはただの好奇心から望美と譲の観察及び監査を日頃から欠かさなかった。
善意の感情を持ちえた二人が悪意の心の私に心を開いてくれるまで、さして時間はかかるはずもなく気づけば私自身もすっかり心を許し、彼女のことを「望美」と呼ぶ始末だ。
仕事のことは心の片隅に必ず隠していたが、それでも一片たりとも楽しさを感じたことはないかと問われれば、答えはすでに決まっていた。
弁慶の定期報告は、桜舞い散る京にいる間は三日に一回ほど。戦がはじまればほとんど顔を合わす機会はないがそれでも、二週間に一度は必ずなんらかの形で弁慶に報告を欠かさなかった。
それが戦を重ねるにつれた弁慶から報告の催促がなくなり、ついには報告の無意味を結論として私との接触を絶つことを告げてきた。
いつしかそんな日がくるのではないかと思っていたが、まさか自分の目の前から消えるよう資金まで出されるとは遙かに私の予測を超えていた。
そして弁慶から告げられた真実とは、少なくとも彼を信頼し愛しき思いを寄せてきた私にとって残酷かつ胸が痛む話しだった。
春日望美は弁慶が自分のことを完全に信じていないことや、そのことから私を傍に置き監視していたことは周知の上であったという。
それでも黙って日々を過ごしていたのは、弁慶が必ず自分を信じてくれると心の底から信頼していたからだ、と。
私は弁慶の言葉の終着点に何が隠れているのか、ひたすら過程をとばしそのことばかりを考えふと一つの結論が頭に浮かぶと、足先から体温が失われていく感覚にとらわれた。
弁慶は続けた。望美は自分に信頼されるためにあえて、監視され続けていたのだと。そしてその真意は自分を乞い、愛おしく思ってくれていたのだと。
また弁慶の心も彼女の傍にいるうちにすっかり望美の魅力に奪われ、抜け出すことができぬほど彼女を・・・

「だから私に消えろ、と?」
「そうです。」
「どうして?あなたたちが幸せになるからといって、どうして私が・・・私が消えなければならないの?」

全身が言い知れぬ不安と、憤りから震え一瞬であったが失語症のように言葉を紡ぐことが不可能になった口。
消えない事実とそれを告げる無表情の弁慶は、残酷かつ迫力があり私は必死奥歯を噛み締め打ち震えることしかできない弱き存在。
促されそうになる涙を呑んでやっと口から飛び出した言葉は、力を失って立つことのできない死人のような面差しから零れると別の意味で迫力がある。
私の疑問に刹那躊躇ったように目を伏せたが、すぐに真っ直ぐに眼差しを切り替えるとはっきりとした口調で告げる。私の胸をえぐるように。

「君が僕を愛している事実があるからです。」

その事実がある限り、望美さんが幸せになれないでしょう?
なんて自分本位な言葉なのだろう、そう思う一方で私の心の理性のガラスが粉々に砕けていくのを感じた。

「弁慶・・・」
「君のためを思って言っているんです。つらいでしょう?僕たちが君の目の前で幸せになっていくさまを見ているのは。僕が君の気持ちに答えられないのを知っていてそれでも好きでいた君には、あまりに酷ではありませんか?」

優しさを見せつけながらもその内容は、私を傷つけることなど厭わないといった雰囲気が見て取れ私はもう反論も懇願も、本音を吐き出すことも億劫になった。
そうなればもう簡単だった。弁慶の差しだす「モノ」を受け取り、懐へ入れる。後は・・・誰にも気づかれないように抜け出し、二度と戻らなければいいだけの話し。
それだけというのに、この何年という年月が繋いできた絆がここで断たれるのかと思えば、胸が苦しくて今にも張り裂けてしまいそう。
絆なんてくだらない。そう思わされたこの瞬間がなんとも恨めしい。そして私の人生を「こんなもの」だと決め付けた弁慶が愛おしさと反比例して殺したくなる。

「弁慶。」
「なんですか?」
「最後にこれだけは言わせて。」

「私はこれを永遠の別れだとはしません。地獄で待っていてください。死してなお、私はあなたを追うことはやめませんから。」

暗く闇を宿らせた瞳を弁慶に向ければ、弁慶はそれは当然の報いだといった様子で私に視線を走らせると、

「構いません。それが僕の罪だと君が告げるなら、僕は甘んじて受け入れます。」

その姿勢があまりに凛々しくて、私はもう憎まれ口を叩くこともできず静かに後ろ背を向けてもう二度とこの世で会うことなどないだろう、弁慶に「愛していた」と心の中で告白すると、静かに一人陣を抜け殺伐とした森の中へ歩みを進めた。



終(酷い内容ですね。後日改めて直してサイトに更新します)
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16:18 | 日々

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