青い空は闇に光る

datememo
--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--:-- | スポンサー広告

2010.05.07 約束の場所に、門田京平が現れなかった話しはかれこれ記憶には古い出来事になる。
なぜ、とかどうして、とか自分を哀れみ悲劇のヒロインじみた言葉が脳裏を占め、雨に打たれたあの日のことは今でも忘れることはできない。
しかし今となっても私にはあの日恋人であった門田京平が約束の場所に現れなかったその理由を知る術はない。
いや、今となってはというべきのなのだろうか。
丸一日、公園のベンチに力を失ったように腰掛けうな垂れる姿は、あまりに惨めでありおそらく周囲の人から観れば不審者でしかなかっただろう。
だがそんな周囲の好奇と不審と、哀れみの視線に晒され屈辱を受けようが、彼が無事に「ごめん」と言って来てくれさえすれば私は笑って許すくらいの心の余裕はあったつもりだった。
にも関わらず、門田京平は現れなかった。
何にせよ一方的に理由もなく人との約束をすっぽかすような人物ではないのは誰よりも理解していたことから、単にいつものお節介という名の喧嘩に急遽借り出されることになったのか、そう予測したがそれにしても携帯は鳴る気配すらみせなかったし、現に鳴ることはなかった。
そんな私の前に光を示すかのごとく傘を差し出したのは、意外な人物であり、高校の同級生だった。
折原臨也。平和島静雄と対極的な立ち位置に存在し、頻繁に彼と揉め事を起しては池袋全体を巻き込み挙句の果てには警察を出動させるほどの騒動を週単位で繰り返している。
食えない男だ、一言二言言葉を交わしただけでどう錯覚させる彼の言動は甘美かつ危険な武器であり、その言葉に騙されないた人間が過去にどれだけいることやら。
とりあえずキレた平和島静雄と同等なくらい、警戒心を怠ってはならない人物だ。
「来ないよ。ドタチンはね。」
折原臨也が現れたその時から妙な胸騒ぎはしていたが、それはすっかり雨により冷えた体から引き起こされた違和感のある熱のせいだとそう決め付けていた。
しかし折原臨也はそんな私に向かって、憎たらしいくらいにその口元を歪め愉しげに囁いた。
何で、そう私は何か事情を知っているであろう彼にそう尋ねた・・・ような気がしたがここからは残念ながら私の記憶には存在しない。
次に目が覚めたときには、臨也の家のだだっ広いベッドを占領しており熱を独特の気だるさに弱っている私を実に愉快そうに見下す彼の姿があった。
臨也は携帯を片手に、気がついた私に目を落とすと電話の相手に向かって「ちょっと待ってて」と一言告げると電話の会話口を手で押さえ、私に携帯を差し出す。
意味が分からずとりあえず受け取ることに躊躇していると、臨也は私に死刑宣告を言い渡すのごとく残酷な現実を突きつけた。
「ドタチンが君と話がしたいってさ。」
時が止まる、だなんて小説の世界の用語であって実際そんな感覚はないと決め込んでいたが、その時私はまさに時が止まったように瞬きをすることすら忘れていた。
今更何だ、というのだろう。言い訳か?自己弁護か?それとも謝罪?まさか・・・勝手に約束場所を離れた私を叱責する?
渦まくものは負を象徴する歓迎されぬ感情ばかりで、臨也の何か企みを含む眼差しですら優しげなものに見えるほど、心は疲労感を示していた。
門田京平という人間は、喧嘩が強く、面倒見が良くていい兄貴分であり、常に周囲の人をひきつける何かをもった芯の強い人間だ。
昔から気が弱くて人に向かって自分の意見を云うことのできない私は、彼を慕い、よくウォーカーたちと共に彼の背中を追い回していた。
ただ少しウォーカーたちと違ったのは、純粋な意味で慕っていたのではなく私には彼に好かれたいという下心があったこと。
そんな思いを抱いてから実りをみせるまで、そう期間はなかった・・・はずだ。
初めて手を繋いで、初めて抱きしめられて、初めてキスをして。どれも忘れられない大切な思い出だ。
京平は付き合ってからも優しい男であり、かつ男らしく私の心を惹きつけて止まなかった。
しかし彼はそのお節介な性分からか、保護者的感覚を仲間内にもっていたからか、時折仲間のために危険な道に私の知らないところで首を突っ込むことがしばしばあった。
心配させたくなかった、巻き込みたくなかったと必ずそう言い訳をする京平の困った顔を目にするとどうしても強く押し切ることができず、常にそう丸め込まれていた。
そんな京平に不満や不平を抱いていたのは事実で、実際それを原因に何度となく言い争いをした経験がある。
今回も、だ。私との約束よりももっと優先するべき事項があった、ただそれだけのことだ。
だが現在の私にはそれを受け入れられる心も、余裕も、何より彼女としての自信もすでに失われていた。
「私には話すことなんてない。そう伝えて。」
熱で痛む頭で、だいぶ思考力が損なわれていたが、私の口からすべりでた言葉は自棄に冷静で思わず臨也を喜ばせそうなほど冷徹さを含んでいた。
臨也は携帯を受け取ることを拒否した私に一度ばかし大げさに肩を竦めたが、すぐにその旨を電話の相手・・・門田京平に一言一句正確に伝えるのが、薄らみ始めた脳裏で聴こえた。
そしてそんな臨也に対して京平も引き下がらないようで、凄絶な剣幕で吼えているのが微かに携帯の奥から耳に伝わったが、臨也は自分の役目は終わったとばかしに京平の訴えに耳を貸すことなくあっさりと携帯の電源をオフにした。一瞬の静寂と侘しさが寝室を支配した。
すると突如ベッドサイドのテーブルの上に置かれた私のカバンの中でけたたましく、私の携帯の着信メロディーが鳴り響いた。
誰が携帯を鳴らしているかなど、言わずとも知れず容易く理解できた。
それでも私が門田京平の着信をとることはなかった。


「さようなら、京平。」


私と京平の関係が終わりを告げたその日、私が知らないところで一つの命が救われた





ボクラはすれ違い続ける、永遠と

(門田さんが好きすぎてやってしまった一品。脳内構成だとあと二話くらい書いたら終わる)
スポンサーサイト

00:17 | 日々

   トップへもどる   

Copyright(C) トキビシ. All rights reserved.
Template designed by komame.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。